JACCAとは
耐震天井への取り組み
~地震での天井落下被害を防ぐために~
はじめに
2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、2000ヶ所以上の天井が落下し、5名もの尊い命が失われました。その後もたびたび地震が発生し、震度6強から震度7の大地震だけでも同年3月12日に長野県・新潟県県境付近、3月15日に静岡県東部、そして4月7日の宮城県沖、まだ記憶にも新しい2016年4月14日、4月16日には熊本県熊本地方、2018年9月6日には北海道胆振東部で発生しています。
1981年(昭和56年)6月1日に導入された新耐震基準による構造設計により、構造躯体の耐震化が進み、建物本体が地震に強くなった反面、非構造部材と呼ばれる天井などの耐震対策の遅れがクローズアップされる結果となりました。
東日本大震災では2000ヶ所以上の天井が脱落しました。
天井落下の原因
地震後「天井が落ちたので現場を見てほしい」「天井が壊れているかもしれないので天井の調査をしてほしい」というご依頼が急増しました。その際、依頼主からの「なぜ天井が落ちたのか?」というご質問に対して、一部の天井の施工に詳しい人からは「クリップが弱いから」とか「ハンガーが変形したから」というような天井部材の強度不足を原因として指摘されることが少なくありませんでした。しかし、それは結果であって本当の原因ではありません。天井落下の本当の原因は、適切な天井の耐震設計が行われていなかったことにあります。
正しく耐震設計されていれば、その要求する強度に見合った耐震部材を使用して天井を施工することになるので、こうした部材の変形、脱落は防げます。つまり天井を正しく耐震設計し、正しく施工する事が重要なのです。
天井の耐震診断が最優先
地震で天井が落下や破損した建物では、壊れた天井を撤去した後に耐震化すべく、適切な天井の設計、施工に着手するケースが多くみられますが、実は壊れていない天井の方こそ要注意です。「うちの天井は震災でも壊れなかった」と安心している建物の所有者も多くいらっしゃいますが、天井の破損状況は下から見上げてチェックするだけではわかりません。点検口やキャットウォークからの目視でも天井の専門家(JACCA天井耐震診断士等)でなければ破損や変形、緩みを見抜けないケースが多いので注意が必要です。
一見、壊れていない天井、落下しなかった天井も天井裏では壊滅的に破損しているケースがあります。たまたま地震で落ちなかっただけです。当組合で調査した天井も約7割の天井に下地部材の破損等が発見されました。地震発生後には専門家によって出来るだけ早く天井裏を調査し、破損や変形、緩みがない事を確認してから施設を使用すべきです。
建築基準法第12条では、特定建築物として、大型の公共施設等はその所有者や管理者が3年に一度天井の裏側までの定期調査を行うことが義務付けられており、調査の不履行や虚偽の報告は刑事罰の対象となっています。
吊りボルトが根元から折れていますが目視では発見できません。触診が必要です。
約2500個の部材(クリップ)が外れかけていたり、脱落していました。
耐震天井の設計と施工
天井の耐震診断が正しく行われると、その施設に一番適した天井の耐震改修方法を提案する事ができます。逆に正しく行われていないと、吊り元の躯体の強度が弱く、そもそも吊り天井では設計できないようなケースを見逃してしまい、改修工事が始まってから顕在化し、工事が中断する事態も発生しています。
平成28年3月に発行された国土交通省監修の「天井の耐震改修事例集」には改修工法が7種類に分類されており、JACCAが関係した各工法の施工現場が多数紹介されています。国土交通省「建築物安全ストック形成事業」の補助金の対象にもなる耐震改修工法の事例として、ぜひ参考にしてください。
おわりに
天井の耐震化への取組みは、まず専門家による天井の耐震診断から始まります。
JACCAでは一般的な鋼製下地材による在来工法の吊り天井から、音楽ホール等の複雑で重い天井、システム天井、木下地天井の耐震診断、さらには体育施設器具、照明設備機器等については破損状況の調査も行っています。
天井裏が壊れていて、危険な状態であるにもかかわらず施設を使用し続け、地震で天井が脱落して事故が発生すると、建物の所有者や管理者が責任を問われます。ぜひ当組合認定のJACCA天井耐震診断士による天井耐震診断をご活用ください。
音楽ホールや劇場等の複雑な天井に適合する最新の準構造耐震天井の例